No.209 紀元前から生き続ける知る人ぞ知る説得技法

2024年07月02


■概要

 社内での同意を得たり、顧客に提案を受け入れてもらうときなど、説得が必要となる場面は多々存在している。説得が失敗に終わったとき、内容お聞いてみると、失敗の多くは、説得の論理を踏み外しているケースが多い。


 説得を了承してもらうための着眼は、太古の昔から成立していた。損得の功利的論拠、規範に基づく規律的論拠、加えて、自身のみからにじみ出る熱意である情緒的論拠の3つを伴えば、説得の成功確率を引き上げられる。


■解説

 紀元前400年、今から2400年も前に、アリストテレスが提唱した弁論術の中に、人の説得の概念が記されていた。そこで示されていたのは、人を説得するときには、功利的論拠、規律的論拠、情緒的論拠の3つが必要と言うことである。


 筆者は、この概念をいつも意識しながら社会を観察してきた。観察から感じる見解であるが、10人の人を説得する場合、およそ7人が功利的論拠を重要視する。そして2人が規律的論拠を重視する。最後の一人は、情緒的論拠を重視するのである。


 失敗する説得を見ていると、これら3つの論拠のどれかだけを主張して言うケースが多い。


 そもそも、なぜ、紀元前にこのような説得技法が確立したのだろうか?筆者の推測だが、その昔、世界では領土を広げる戦争が多発していた。領土が広くなると、隣国まで戦争に行く場合、馬や徒歩で行進するために、片道で数ヵ月を要することもあり、戦地で数ヵ月戦い、また数ヵ月かけて戻るという形式だったと推察する。


 生きて帰れる保証もなく、家族とも別れる戦争に、誰も行きたくなかったと想像する。そんな国民に対して、戦争に前向きに参加してもらうために、説得の技法が重要であったのだと推察している。


 この技法は、米国の負け知らずの弁護士も活用している手法である。


執筆者:萩原正英